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BOXER M@STER

 俺はとあるアイドルのボクササイズDVD、ミリオンセラー記念のイベント
でエキシビジョンマッチをすることになった。
 アイドルのパンチを適度に躱し、ガードしながら程々に反撃の手を出す。無
論、俺のパンチは当てずに適当なコントロールをする。そんな、簡単な仕事の
はずだった。
 受けた理由は何のことはない。俺は彼女のファンであった。ただ、それだけ
の事。
 実際に彼女が実演するDVDも見たが、かなり綺麗な基本フォームで次々と
パンチを放つ姿に俺の心は躍った。
 少しばかり風変わりではあるが彼女のダンスパートナーを務める事ができる
と俺は有頂天になっていた。
 ところが蓋を開けるとその幻想はあっさりと打ち砕かれた。
 ヒールが高めのブーツで俺がついていくのがやっとと言うフットワークを刻
み、鋭いパンチを次々と繰り出してくる。
 特に左ジャブは白いグローブがカメラのフラッシュの様に一瞬で迫り来る。
 なんとか目が慣れてきた頃に、それを躱そうと試みたが俺の頬がざっくりと
裂けてしまった。
 俺は少しばかり試合をする振りをするつもりだったが本気で闘わなければな
らなくなった。
 気を引き締め、彼女の露出度の高めなステージ衣装から覗く筋肉の動きを意
識し、彼女の繰り出す拳を見極めようと心掛ける。
 だが、俺は彼女の動きを捉えることはできなかった。
 彼女の動きは在る偉大なボクサーが口にした蝶のように舞い蜂のように刺す
と言う言葉通りだった。
 俺の攻撃を易々と躱し彼女は鼻歌交じりに次々と俺の身体に其の拳を埋め、
俺の体力をどんどん蝕んでいく。
 俺はその様子に戦慄を覚えた。彼女の刻むリズムは俺が試合前に何度も繰り
返し見たエクササイズプログラムそのものだったからだ。
 俺の攻撃をウェービングで避けパーリングで逸らし、リズミカルに激しく彼
女はパンチを打ち込んでくる。その度に俺の内蔵は抉り潰され、脳がカクテル
の様にシェイクされた。
 そして、第一ラウンドの終わりまで残り時間十秒ほどまで俺は徹底的に打ち
のめされ満身創痍となっていた。その間に彼女が天才的ボクサーであり、天性
のハードパンチャーで在ることを俺は思い知る。
 膝は何時落ちてもおかしくないほど笑い、意識も朦朧としていた。そこへ彼
女の容赦無い左のダブルが襲いかかってきた。
 右の脇腹、肝臓の辺りを猛獣が食い破ったのではないかと思わせる一撃。そ
の一撃に耐えかね、遂に俺の膝が崩れ始めた。
 そこへ更に右の顎を斜め下から彼女の拳が救い上げる。ボディフックを打つ
要領で顎を撃ち抜くスマッシュ。俺の首が捻じれ、次いで身体が捻られ、リン
グへと叩きつけられた。
 薄れいく意識の中、彼女の声が妙に耳へと響いた。それは彼女のボクササイ
ズDVDの謳い文句だった。
 彼女が更に何か言葉を続ける。しかし、それを俺は明瞭に聞き取ることがで
きなかった。

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