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春麗vsバルログ 空中演舞

 スペイン、レケナの螺旋塔、四方を金網で囲まれた闘技場で痩身だが筋肉質
で蛇の刺青を入れた仮面の男と青いチャイナドレスの女が対峙していた。
「貴様が春麗か…ようこそ、私の名はバルログ、美しいものにふさわしい、美
しい死を与えてやろう」
 右足を引き、鉤爪を装備した右手を体に添え、左手を横方向へ水平に差し出
し頭を下げるバルログ。その姿は口調と相まって貴族然としていたが、どこか
狂気を感じさせるものだった。
「あらあら、殺すなんて穏やかじゃないわね。もっとも、話し合いで済むとも
思っていなかったけど」
 両手を腰に当て呆れたと言わんばかりの態度を示す春麗と呼ばれた女。切れ
長の瞳、その目尻には紅色のアイシャドウ、薄い唇にも紅が塗られている。頭
髪は二つのシニヨンに纏められ白いカバーで覆っていた。顕になった耳朶には
ピアスが付けられている。
「シャドルー幹部、バルログ。貴方に重要参考人として同行を要請します……
と言っても聞くわけないわよね、さぁ、はじめましょうか」
 余裕の口調でバルログへと手招きをする春麗。その挑発に応えるかのように
バルログは鉤爪の付いた右手を振りかざし一気に間合いを詰めた。

 鋭く研ぎ澄まされた鉤爪は凶刃と言うに相応しい冷たい輝きを閃かせ、春麗
へと迫る。しかし、春麗は軽く身を反らすだけで躱した。バルログはすぐさま
身を翻しバク転で間合いを離してからスライディング、春麗の足元を狙う。対
する春麗は後方へと大きく跳躍し金網の支柱を蹴ってからバルログへと右足を
突き出し飛び蹴りの姿勢で急降下した。バルログが急制動を掛けスライディン
グを止める。スライディング中のバルログを狙った春麗は飛び蹴りの姿勢を解
くと三角飛びの勢いを殺し着地した。互いに構え直す二人、一瞬の静寂の後に
再びバルログが鉤爪を閃かせ春麗へと向かっていくとフェンシングさながらに
突き出し薙ぎ払う。
「フフフ、いつまで逃げ切るか、楽しみだ」
 バルログの鉤爪を紙一重で身を捩り、屈み、掻い潜る春麗。その表情には焦
りはない。むしろ、この凶刃を躱すスリルを楽しんでるかの如き笑みを浮かべ
ている。
「あら?私はまだ準備運動でもしてるのかと思ったけど?」
 バルログの鉤爪を避けながら挑発する春麗、僅かに息を弾ませながら心地よ
い、軽いランニングにでも興じてるかの様子だ。更にバルログは鉤爪を振るう
が春麗を一向に捉える気配はない。
「なるほど、金網を背負わない脚さばき。中々のものだ。だが、それこそ狩る
楽しみが在るというもの」
 バルログは再びバク転すると間合いを離してから跳躍した。

 金網の支柱を次々と蹴り飛び回るバルログ、その姿は忍者を思わせた。春麗
はバルログの動きを追おうともせず構えを解き自然体で立ち呼吸を整える。
「ほう、構えを解いたか?それは動揺などしてないと言う虚勢か?それとも私
の動きを追い切れずに観念したか?まぁ、良い。どちらにせよ、ゆっくりと嬲
り切り刻んで楽しむとしよう」
 先ずは威嚇でもするかのようにあえて真正面から飛び蹴りを仕掛けていくバ
ルログ。春麗はそれを紙一重で躱す。バルログは春麗の背後に着地すると再び
跳躍し、飛び回り始めた。その後も、バルログは金網を蹴り宙を舞い、爪を振
りかざし、突き出し、或いは飛び蹴りで春麗に急降下する猛禽類の様に襲いか
かる。春麗を試すかのようにあえて背後からは襲い掛からない。春麗はバルロ
グの攻撃を回避し続けるが何れもギリギリのタイミング。
「躱すのが精一杯のようだな。ならば、これはどうかな?フフフ」
 バルログはただ、飛びかかるだけではなく金網を蹴っての急降下をフェイン
トとし春麗の側へ着地すると同時に鉤爪を突き出し、振るい、蹴りを放つ。何
れもスピードを信条とする春麗の動きを上回る速さ。しかし、何時まで経って
も春麗を捉えることはない。

 攻め続けるバルログは次第に焦りを見せ始めた。バルログの攻撃を回避する
春麗は大きく動く様子を見せない。バルログは攻撃を繰り出す瞬間は当たると
確信していたが、実際は僅かの差で躱されている。ダイレクトに狙ってもフェ
イントを交えても、或いは春麗の回避を予期し攻撃を繰り出してもそれは変わ
らない。バルログは素早い動きで春麗を幻惑するつもりだったが、彼女の実と
思えば虚、虚と思えば実と言う巧みな回避に振り回され始めていた。
自分の攻撃が見えない力で逸らされてるのではないかとすら錯覚する。
「そろそろ、退屈してきたわね。反撃させてもらおうかしら」
 春麗が攻撃を空振りしたバルログの仮面へ向け右の縦拳を突き出すが、彼は
それを身を反らせながら回避する。春麗は更にそのまま、右の上段回し蹴りを
繰り出した。春麗の伸びた腕がバルログの視界を遮り、バルログは春麗の蹴り
に気づかない。春麗の白いブーツの甲がバルログの側頭部に吸い込まれる。鈍
い打撃音と共にバルログの意識が真っ白になる。春麗は右上段回し蹴りの勢い
を殺さず、更に回転を続け左の中断後ろ回し蹴りを放った。バルログの鳩尾に
春麗の踵が砲弾と化し抉りこまれる。バルログの呼吸が一瞬、止まり、泳ぐエ
ビのように身体を折り曲げたまま後方へと吹き飛ばされた。

 不本意ながら中を舞うバルログが飛ばされていた意識を取り戻す。その瞬間、
背後から金網と自分が激突した音が響き、肺が圧迫され再び息が止まる。大の
字になり、金網に磔となったバルログはそのままずり落ちた。その様子を冷や
やかに眺める春麗
「ほう、私をとらえるとは中々やるものだな」
 口には賞賛の言葉を紡ぎだしたが、その声は怒りに震えていた。バルログを
蹴り飛ばした春麗は再び自然体のまま立っていた。その様子にバルログの怒り
が更に膨れ上がる。
「お前など……無残に切り刻んでやる!」
 バルログは跳躍し、また金網を蹴り飛び回った。春麗を幻惑しようとする飛
翔は先程のものに比べて激しさを増している。春麗は全く意に介さず今までと
同じように立っていた。バルログはそんな春麗に対し背後から切り裂こうと飛
びかかっていく。その勢いは今までと比較にならないほど疾い。バルログの鉤
爪が凶悪にきらめき、春麗に迫る。しかし、それも春麗を捉える事は出来ない。
更にバルログの鳩尾に春麗の足刀が捩じ込まれる。春麗はバルログの背後から
の急襲を躱しつつ振り向きざまに横蹴りを放っていたのだ。

「貴方がどんない疾く動こうと私に向かってくる以上は躱すことなんて簡単だ
わ。そして、こうやって反撃することもね」
 春麗はバルログを串刺しにしたまま脚を振り上げ、一気に振り下ろす。バル
ログの身体が石畳に叩きつけられ身体を捻りながらバウンドした。春麗は右足
を頭上まで振りかざし、斧でも叩きつけるかのように急降下させる。バルログ
の身体がバウンドの頂点に達する直前、春麗の踵がバルログの後頭部へと叩き
つけられた。顔面から石畳に突っ込んだバルログの仮面が粉々に砕ける。否、
それだけではない。激突と同時に鼻も潰されていた。
「まさか、もう終わりとは言わないわよね?」
 潰された蛙のようにうつ伏せに横たわるバルログを春麗が挑発する。バルロ
グは激しい衝撃を受け、脳を揺さぶられ、奪われた身体の自由に抵抗し、必死
に起き上がろうとする。そして、鼻から顔に伝う生暖かい感触に気付き、左手
でそれを拭った。その手には赤くぬめる血液が纏わり付いていた。
「貴様!よくも私の美しい顔を!」
 貴公子の様な顔を歪め激昂し叫ぶものの、バルログの身体はその怒りについ
てこない。のろのろと立ち上がろうとして膝立ちになるバルログを見下ろす春
麗。
「あら、立ち上がれないようね、手伝ってあげるわ」

 春麗はバルログの顎を左足で蹴りあげた。バルログの身体が一気に伸び上が
り強引に直立させられる。
「仮面で顔を隠すなんて、どれだけ醜い顔をしてるのかと思ったけど、良い男
ね。鼻を潰したお詫びに、整形手術なんてどうかしら?」
 春麗は振り上げた左足を膝だけ曲げ石畳には降ろさず、軸にした右足の向き
を変え、左足を前にする。そして、ブーツの甲と底でバルログの両頬を往復ビ
ンタの様に張りだした。打撃音が途切れること無く響き、バルログの顔が見る
間に膨れ上がり痣に覆われる。バルログは両の頬に灼熱感を感じたが脳を絶え
間なく揺さぶられる事で、その感触すら麻痺していった。時折、唾液と口内に
出来た傷から流れた血、白い歯の欠片と思しきものが飛び散る。
 何十発、もしかしたら百発は超えたと思われる頃に春麗は蹴撃を止め、左足
を上げたまま京劇の様なポーズを取る。
「どうかしら?私の整形手術、気に入ってくれたかしら?」
 膝から崩れ落ち、尻餅をついくバルログ。そのまま、倒れるかと思いきやバ
ルログは放心状態で座り続けていた。だらし無く半開きになった口からは所々、
欠けた歯や歯が抜け落ちた隙間が覗き、血と唾液が流れている。
「言葉も出ないほど感動してくれたようね?嬉しいわ」
 春麗はバルログを嘲笑う。その問いかけが切掛か、焦点が合っていなかった
目に光が宿る。

 腫れ上がった左右の頬が発する熱と苛む痛みにバルログは自分が置かれた状
況を理解する。
「おのれ…おのれ…おのれぇぇぇっ!」
 狂った様に叫びながらバルログは立ち上がる。ほんの僅か前に立ち上がろう
と失敗し、春麗に無理矢理、蹴り起こされ、更には蹴りの連打を頭部に受け続
けたとは思えぬ程の激しい動きで春麗へ攻撃を繰り出すバルログ。それは蝋燭
の火が燃え尽きる前に一瞬だけ、その炎を大きく燃え上がらせる様子を思わせ
た。勿論、春麗へその攻撃は当たる訳もない。動きの速さと言う点では今まで
を大きく上回っていたが冷静さを失い、無駄が多い上に正確さも欠いていた。
「まだ、飽きもせず続けるのね」
 春麗はうんざりしながらバルログの猛攻の合間に右足を振り上げた。その踵
がカウンターで決まりバルログの顎を突き上げ、彼は斜め後方へと宙を舞う。
仰け反った姿勢で金網に向かうバルログ、視界に金網が入った瞬間、彼は驚く
べき事に宙返りを決めて、渾身の力で金網を蹴ると一直線に春麗へと突き進ん
だ。
 春麗は向かってくるバルログへと右の後ろ回し蹴りを放った。突き出された
バルログの鋭利な鉤爪を横から捉える春麗の蹴り。鉤爪が飴細工のように曲が
り使い物にならなくなる。春麗は膝を曲げ太腿を一度、石畳と水平にするとバ
ルログへと横蹴りを放つ。

 足刀が再びバルログの鳩尾へと深々と沈んでい行き、春麗の足に串刺しとな
る。春麗の足刀が腹部に抉りこまれたバルログは身体の内部で爆発が起きたの
ではないか錯覚するほどの衝撃が全身に走り文字通り身を震わす。春麗はその
足をバルログから引き抜くと、彼は重力に身を委ねようとした。春麗は更に蹴
りを繰り出す。その蹴りはバルログが石畳に落下する前に、その身体へと吸い
込まれていった。
「しつこい男は嫌いよ…百裂脚!」
 春麗の蹴りが対空機関砲の様に速射される。バルログは続けざまに僅かな落
下の直後、春麗の繰り出す蹴りで舞い上げられた。春麗の変幻自在の蹴りがあ
りとあらゆる角度から繰り出され、数えきれない残像を残し、バルログの落下
を許さない。バルログの身体に、春麗のブーツによって痣と打撃の衝撃に依っ
て皮膚が裂けた傷が無数に刻まれていく。否、それだけではない。両の頬が腫
れ上がった顔面にも蹴りは吸い込まれ瞼が腫れ上がり、裂傷が増えていく。
「そろそろ、仕上げと行こうかしら」

 春麗は百裂脚を繰り出していた右足を下ろすと落下してくるバルログへ左足
を振り上げた。バルログの顎を春麗のブーツのそこが捉え顎をひしゃげさせる。
 バルログが高々と垂直に跳ね上げられ、逆さに落下し始めた。春麗はバルロ
グの落下のタイミングを測り石畳に彼が叩きつけられる直前に渾身の右の後ろ
回し蹴りを繰り出す。この日、何度目か解らない程、撃ちぬかれた鳩尾に春麗
の足が突き刺さる。バルログの口から血と唾液と胃液が入り混じったものが噴
出した。バルログが逆さのまま金網へとカタパルトで打ち出されたように突進
していく。金網とバルログが激突した音がレケナの螺旋塔中に響き渡った。
 金網が変形しバルログを咥え込み彼を逆さのまま磔となる。上半身は血だる
まになり、自慢の貴公子然とした美貌は醜怪な深海魚の様な有り様となってい
た。
「歪んだ性格にお似合いの姿になったわね?しっかり感謝するのよ」
 金網に歩み寄り満足感に満ちた笑みを浮かべ、バルログを見る春麗。辛うじ
て意識を保ってたバルログの瞳に春麗の姿は美しい悪魔の様に見えた。特に鍛
えぬかれ強力無比な破壊力を生み出す大腿筋のラインが目につく。春麗の美し
さに対する嫉妬と、自分の技など彼女の前には児戯に等しいと言う恐怖が胸中
に渦巻く中、バルログは気を失った。

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