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拳撃女王・春麗 ~パワー・ゲーム~

 夜のとある街角で褐色の肌のモヒカンヘアーの筋骨隆々な大男が女と対峙し
ている。男の名はバーディー、卑劣で残虐な闘いぶりでプロレスを始めとする
あらゆる格闘技界から追放され、今は秘密結社シャドルーの一員となった男だ。
その腕にはプロレスラー時代からの愛用の武器であるチェーンが巻かれている。
 バーディはシャドルーの指令により組織を嗅ぎまわる人間を始末する様に命
じられていた。その実は組織に対し反逆を企て乗っ取ろうとの目論見を持って
いるがここで一つ手柄を立て、組織内での地位を固め手駒を増やそうという算
段でこの指令に従っている。
 今、バーディーが対峙しているのはシャドルーを追う者の一人である女刑事、
春麗。かつては中国拳法の達人、足技の名手と謳われていたが、在る切掛から
ボクシングに傾倒していた。春麗のボクシング技術は余人の追随を許さないと
も言われる程の領域に達していたが、彼女は技術に見合うだけの力が不足して
いるとして肉体改造も重ねていた。青のタンクトップとボクサートランクスに
包まれたその身体は徹底的に鍛えられた筋肉に鎧われ男子ヘビー級ボクサーと
較べても遜色のないものとなっている。
 僧帽筋は大きく張り出し、二頭筋と上腕三頭筋を合わせた腕周りは陸上競技
短距離選手の太腿以上の太さを有している。腹直筋、腹斜筋は彫刻刀で刻み込
まれたように幾重にも割れ、広背筋はうねりを上げており、大腿筋はかつて蹴
り技で戦っていた時以上に鍛え上げられ、重量級の肉体を支え素早いフットワ
ークを実現させるには十分なものとなっていた。

「おう、姉ちゃん、あんたもかなり鍛えてる様だが俺にゃぁ敵わない様だな」
 女の身でありながら男でも体格に恵まれ相当、鍛え込まなければならない筋
肉を有する春麗を物珍しそうに眺めながらも軽口をたたくバーディー。春麗の
肉体も鍛え上げられているが、身長2メートルを超す巨漢のバーディーには、
まだまだ及ばないものに映る。
「そう?それじゃ早速試してみるかしら?」
 頭ひとつ、高い位置に在るバーディーの目を見ながら嘲りの目で春麗が応え
る。
「おもしれェ、アバラの4、5本イっても知らねえぞォッ?!」
 春麗の挑発的な言葉にバーディーは下品に笑いながら跳びかかり、闘いの火
蓋は切って落とされた。
 力任せにパンチを蹴りを繰り出していくバーディー、巨漢ながらもその攻撃
は意外に素早い。膨大な筋肉が生み出す瞬発力がその源だった。しかしながら
どの技も大振りであり、春麗は容易くファイティングポーズも取らずに回避し
ていく。
「オラどうした!逃げてばかりじゃ、勝負になんねェぜ?それとも怖気づいち
まったかァッ!?」
 あいも変わらず下品に笑いながら、自信満々に春麗へと攻撃を繰り出すバー
ディー、攻撃を振り回しながらも意外なほどの器用さで腕に巻いていたチェー
ンをいつの間にか拳へと巻きつけていた。
 鎖を巻かれバーディーの怪力によって繰り出された拳を喰らえば、例え以前
よりも遥かに強靭な肉体を手に入れていた春麗とてひとたまりもない。
 しかし、春麗は依然としてファイティングポーズも取らず余裕の表情でバー
ディーの攻撃をかわし続けていた。その春麗の背後にビルの壁が立ちはだかる
「ヘッヘヘ……もう逃げ場はないぜッ!」
 春麗を追い詰めたと確信しバーディーは拳を大きく振りかぶる。

 夜の街に打撃音が響き渡る。その音は鎖を巻いた拳が肉を打つ音ではなく、
革のグローブに包まれた拳が肉を撃つ音だった。正体は無論、春麗のカウンタ
ーパンチ、見事なフォームの右ストレート。バーディーの動きが止まり、春麗
も右ストレートを放った態勢で静止する。
「ンンン、効かねェなァ」
 しばしの静寂の後、バーディーは春麗の拳から顔を話してからわざとらしく
首をコキコキと鳴らしながらニヤリと笑う。
「あら、残念ね……完璧なカウンターだったと思ったんだけど」
 余裕の表情のバーディーに対し、春麗もまた余裕の表情で応える。
「何だァ?怖くて強がってるのかよォ?」
 下卑た笑みを浮かべ、バーディーは大きく拳を振りかざしてから突き出した。
バーディーのパンチの予備動作の間、春麗は十分に壁を背後にした状況から逃
れるだけの余裕はあった。しかし、春麗はそうしなかった。
 バーディーは春麗がただ強がりを見せているだけと判断していた。拳に巻か
れた鎖が春麗の皮膚を切り裂くさまを想像しながら下品な笑みを浮かべている。
次の瞬間、ビルの壁を抉り陥没させた音が夜のしじまに音が響く。
「貴方も直ぐに終わらせたらつまらないでしょう?もう少し抵抗してあげよう
かと思ってね」
 もうもうと舞い上がる瓦礫の破片の中、壁から拳を引きぬきバーディーは声
のする方へと向き直る。そこには春麗の姿があった。
「流石にさっきのを貰ったら、今の鍛えた身体でも保たないわね…ギリギリで
躱せて良かったわ、本当」
 心底、肝を冷やしたとばかりの口調で春麗が告げるが、その表情は未だ余裕
に満ちていた。
「ギリギリまで引きつけるのは中々のスリルがあったわ」
 春麗の表情、挑発の言葉にバーディーの顔が怒りに強張っていく。正に頭か
ら湯気が上がらんかの様な表情だ。それもそのはずである。自信満々に追い詰
めたと思っていた女が自分を小馬鹿にしてきたからだ。
 春麗はその様子を?心で大笑いしながら左腕を前にしオーソドックスなファ
イティングポーズを取った。
「それじゃ、今度は私から行かせてもらうわね」
 軽くリズムを刻むようなフットワークを見せ、春麗は間合いを測り始めた。
 これから、春麗の言う抵抗が始まろうとしていた。

 バーディーの視界から一瞬にして春麗の姿が消え、その直後に軽い衝撃を頭
部に感じる。その正体は春麗のジャブだ。フットワークを駆使しバーディーの
刺客へと回るとセオリー通りに牽制をかける。更に春麗はバーディーの刺客を
キープしながら矢継ぎ早にジャブを繰り出していった。
 対するバーディーは春麗からの攻撃が放たれた方へと絶えず向き直ろうとす
るが、春麗のフットワークがそれを上回っていた。
 しかし、バーディーの頭は徐々に冷えていく。未だ春麗のパンチの正体は分
からないがほとんど効いていない事に自分が優位にあると感じたからだ。
 春麗のジャブが一瞬、止みバーディーは春麗を視界に捉える。そこへ春麗の
右ストレートが再び伸びてきた。春麗のグローブがバーディーの頬を捉えると
バーディーは僅かながらによろめいた。
「今のはいいパンチだったぜェ」
 バーディーがわざとらしく頭を振ると再び下卑た笑いを浮かべる。
「行くぜェ!ブルヘッド!」
 叫びながらバーディーは春麗へと向い突進しながら頭を大きく振りかぶった。
プロレス時代の必殺技、ランニングヘッドバッド。猛然と突進する姿が猛牛の
ようだったからと名付けた技だ。その突撃速度は今まで以上に巨躯からは想像
も出来ないほど速い。
 だが、春麗へと向けて放たれた頭突きはその途上で阻まれた。

 再びのカウンター、三度目の春麗の右ストレートがバーディーの頬を抉る。
バーディーの脳を激しく揺れ、ヨタヨタと千鳥足になりながら後退を重ね、
やがて尻餅をつく。バーディーの奥歯がグラグラと揺れ、歯茎と切れた口内
からの出血により鉄の味が口の中に広がった。
「さてと……ウォームアップも終わったし、本気で行かせてもらおうかしら」
 ダウンしたバーディーを見下ろしながら冷たく、しかしながら楽しげな響
きを持った声で春麗が宣言をする。その表情は酷薄な笑みを浮かべていた。
「てめぇ!いい気になってんじゃねぇ!」
 バーディーが再び、怒りを露わにし手に巻いていたチェーンを春麗へと向
け投げつける。マーダラーチェーン、相手に鎖を巻きつけそのまま振り回し
相手を地面に叩きつけるバーディーの必殺技、それがバーディーの狙いだっ
た。バーディーの鎖が春麗の左のグローブに巻き付く。
「捕まえたぜぇ」
 バーディーは鎖を手繰り寄せながらゆっくりと立ち上がり、そして一気に
渾身の力を込めチェーンごと春麗を振り回そうとした。しかし、春麗は微動
だにしない。バーディーはまるで綱引きでもするかの様に腰を落とし必死に
鎖を引き始めた。
 対する春麗は自然体で両足を肩幅に開き、チェーンの巻かれた左拳だけを
掲げバーディーとの力比べに望む。
 全体重を掛け春麗を必死に引き寄せようとするバーディー、春麗はこれ位
の荷重は苦でもないと余裕の笑みを浮かべながら、時折、左腕を動かす。そ
の度にバーディーは逆に引っ張られてはよろめき、再び腰を落とし綱引きの
姿勢へと戻る。
「貴方の力はそんなもの?そろそろ退屈になってきたわ」
 春麗はわざとらしく欠伸をして左腕を勢い良く引き寄せるとバーディーは
抵抗もできず飛ぶ様に春麗へと向かっていった。
 タイミングを見計らい春麗は右の拳を下から上へと突き上げる。その軌道
は完璧なまでにバーディーの鳩尾を目掛け綺麗な円弧を描いていた。

 強制的に自分の制御が効かないまま春麗の元へと向かわされたバーディー
の鳩尾へ春麗の右ボディアッパーが手首まで埋没する。バーディは腹部から
全身へと広がる衝撃と横隔膜を突き上げ身体の中へと侵入してくる異物の感
覚に苦悶の表情を浮かべてから崩れ落ちうつ伏せになる。
「素直に鎖を離せばこんな目に合わなかったのに……あら、手枷に繋がって
いたのね?なるほど、それじゃ、手放す訳には行かないわよね」
 足元で声もなく喘ぎ横たわるバーディーを春麗は見下ろす。春麗は器用に
ボクシンググローブのナックル部分へと鎖を巻き付けながら、バーディーの
手枷と鎖を付け根を踏みつけ、左腕に力を込めた。春麗の二の腕が盛り上が
ると同時に鎖が千切れる。春麗は余った鎖を更にグローブへと巻きつけ、未
だに横たわるバーディーに背を向けてから数歩、離れてバーディーへと向き
直った。
「さて、これでお終いはつまらないわよね?」
 グローブを打合せて春麗はバーディーを挑発する。左のグローブに今しが
たバーディーから奪い、巻かれた鎖がジャラジャラと春麗が拳を打ち合わせ
る度に音を立てる。
 一方、バーディはようやく膝をつくと納得がいかないと言う表情を浮かべ
春麗を睨みつけていた。自分の渾身の力を春麗が左腕一本で対抗し、ただの
一撃で二度もダウンを奪った事実が受け止められずにいた。確かに春麗は女
としては規格外の筋肉の持主である。だが、バーディーはそれを上回る骨格
と筋肉を持つ巨漢である。自分がパワーで劣るわけがない、自分が女に負け
るはずがない、そんな思いが脳裏に渦巻き、腸が煮えくり返り、憤怒の形相
を浮かべていた。

 バーディは無言で立ち上がるとジリジリと間合いを詰め始める。春麗はそ
の様子にサウスポースタイルのファイティングポーズを取り、フットワーク
で応じた。互いに間合いを計り円を描く二人、その輪は徐々に狭まりつつ在
る。後、一歩でバーディーが自分の間合いに春麗を捉える、そんな瞬間に春
麗の動きが加速した。
 革に包まれた春麗の右の拳がバーディーの顔面に吸い込まれた。更に2発、
3発と春麗のジャブが繰り出され、乾いた打撃音が響き渡る。その度にバー
ディーの頭蓋の中で脳が不快なダンスを繰り返す。
 今までのジャブとは明らかに質が違う、明らかな致命打とはならないがダ
メージをしっかりと蓄積させ敵を仕留めるための布石。春麗はフットワーク
を駆使しながら散発的にバーディーへとジャブを当てていく。バーディーも
無論、ただ春麗のパンチを貰っているばかりではない、春麗のジャブの切れ
目に反撃の手を繰り出していく。しかし、春麗はそれらの攻撃を躱し捌きな
がらバーディーをジャブで弄ぶ。
「そろそろ、もっと痛いのが行くわよ。覚悟はいいかしら?」
 バーディーをジャブで弄ぶのが単調に感じてきた春麗はそう言うと鎖の巻
かれた左のグローブを突き出した。春麗の左の拳がバーディの脇腹を抉る。
完璧なまでのリバーブロー。鎖の巻かれた春麗のグローブがバーディーの肝
臓を押しつぶし、バーディーの顔が苦悶に歪む。そこへ春麗のジャブの連打
が再開された。

 春麗はバーディーを中心としたサークリングを右に左に繰り返しながら、
ジャブの連打の間に左のストレート、フック、アッパーを上下に打ち分けて
いく。ただでさえ重い春麗のパンチはバーディーから奪い取り拳に巻かれた
チェーンのおかげで威力を増強させていた。
「ほらほら?自分が用意した凶器で痛めつけられる気分はどう?」
 ジャブを9、サウスポーに構え体重の乗った左のパンチを1の割合で織り
交ぜ時折、左のフェイントを織り交ぜながら春麗がバーディーを挑発する。
春麗に対する怒りで分泌されるアドレナリンにより巨躯に相応しい打たれ強
さで耐えているバーディだが流石に春麗の左の拳が動きを見せると防御の姿
勢を見せる。しかし、春麗はバーディーの防御の手薄なところを的確に捉え
ていく。春麗の左拳がバーディーの腹筋を突き破りめり込み内蔵を押しつぶ
し、頭部を激しく揺らし脳をシェイクする。次第にバーディの動きが鈍り始
めた。
 春麗の幾度目かの左ボディフックがバーディーの脇腹を抉る。バーディー
の巨躯が右に傾ぎ、頭が下がってくると春麗はボディフックと頭部へのフッ
クの中間軌道を描くスマッシュを放った。バーディーの顔面が歪み、折れた
歯と血、唾液を口からほとばしらせ左上を見上げる様な格好となりそのまま、
春麗へと背を向けるとうつ伏せに倒れた。
「やはり、こんなものに頼ってはつまらないわね」
 春麗はファイティングポーズを崩すとグローブに巻かれた鎖を解くと四つ
ん這いになり起き上がろうとするバーディーの手元へ放り投げた。自分の手
元に戻ってきた凶器を見るやいなやバーディーは右の拳に巻き付けると立ち
上がった。
「てめぇ、ぶっ倒す」
 右頬を腫れ上がらせ目を血走らせたバーディーは未だ諦めた様子もなく、
怒りを露わにし呟く。
「諦めの悪い男ね……まぁ、良いわ。私も身体が温まってきたし、そろそろ
本気を出させてもらうわ」

 今までの闘いがウォームアップだったと言う宣言にバーディーが猛り狂い
チェーンを巻きつけた拳を春麗へと向い振りかぶる。一方の春麗は構えも取
らずにただ立ち尽くしていた。
 バーディーの拳が虚しく空を切る。春麗は左足を軸にして半歩、身体を引
きバーディの攻撃を躱していた。対するバーディーは伸びきった拳を力任せ
に振り回し春麗へと向け裏拳を放つ。対する春麗は屈んで、その下を掻い潜
る。バーディーはさらに春麗へと向い拳を蹴りを繰り出すが春麗は僅かな動
きで躱しながら、構えをとった。今度は左を前にし右をメインとするオーソ
ドックスなスタイル。
 この闘いが始まってから幾度目かのバーディーの右パンチが繰り出される。
春麗はその攻撃を躱しながら一歩、低い姿勢で右足を踏み出す。バーディー
の顔を春麗が覗きこむような姿勢、その直後バーディーの腹部を爆発したか
の様な衝撃波が襲い全身へと広がっていく。春麗は踏み込みながら右ボディ
アッパーを繰り出していた。バーディーの巨体が、くの字に折り曲がり浮き
上がる。春麗は突き出した右の拳を引き抜くと左の拳を突き上げた。
 先の打撃と寸分たがわぬ位置を正確に春麗の左ボディアッパーが捩じ込ま
れるとバーディーの身体が更に浮き上がった。春麗が拳でバーディーを持ち
上げる様な格好になる。春麗は更に拳をバーディーの顔が自分の高さになる
まで突き上げていった。
「貴方の筋肉は無駄で見掛け倒しなだけ……私の筋肉の方が無駄なく効率よ
く、そして貴方以上のパワーを発揮するわ。今までは手加減していただけ、
これからたっぷりと貴方の身体に教えてあげる。口で言うのは勿論、4発や
5発、貰った所で貴方の頭では理解できないでしょうから」
 聞くものの背筋に寒気が走る冷たい声で春麗はバーディーに囁く、しかし、
その声は心底楽しげであった。

 春麗は突き上げた左の拳をゆっくりと下ろすとバーディーのブーツの裏が
アスファルトへと接地する。更に春麗はバーディーの腹部から拳を引き抜い
た。バーディーはそのまま前のめりに崩れそうになる。
「誰が倒れて良いって言ったかしら?」
 身をかがめ、今しがた引き抜いた左の拳を地を這う程の低さから一気に突
き上げる春麗。それはバーディーの顔面を真正面から捉え無理矢理、直立さ
せた。
 バーディーが立ち上がる一瞬のタイムラグを利用して一旦、サウスポーに
構えたファイティングポーズをスイッチする春麗。バーディーの身体が直立
した瞬間、春麗は左右のフックを繰り出した。凄まじい破裂音が、2回響き
渡るはずの破裂音が重なりまるで1発の打撃音のように聞こえる。それ程ま
でに春麗の拳は高速だった。
 まるで頭を挟まれたかのような衝撃にバーディーの意識が飛びかける。否、
一発目のフックで飛んだ意識が二発目のフックの激痛で呼び戻されたという
べきか。ふらふらと酔っぱらいが千鳥足で歩くかのように前へ後ろへとよろ
めく。そこへ春麗の右ボディフックがバーディーの脇腹を食い破る。
 バーディーの左の肋骨が嫌な音を立てた。ヒビが入ったのか折れたのか、
バーディーには判らない。その事実を把握してるのは自分の拳に伝わる手応
えに何かを確信したかのような表情を浮かべた春麗のみ。
 そして、その春麗は攻撃の手を緩めようとはしない。鈎状に突き出した右
腕を素早く引くともう一度、その拳を振りかざす春麗、目標はバーディー頭
部。突き進んだ春麗の右フックはバーディーの左頬を捉え歪ませた。
 バーディーの首が捻れそれに続くように身体も捻れ始める。
 春麗は再び右腕を引くと足首から膝、股関節、腰、肩と全身の捻りを利用
した右ストレートを繰り出していた。無論、ただの右ストレートではない、
真っ直ぐに突き出した腕も捻り込まれたコークスクリュー・ブロー。
 それはバーディーの左頬に再び捩じ込まれ、抉りバーディーの顔を歪ませ
る。血と唾液が入り混じったものと折れ砕けた歯を撒き散らしバーディーの
巨体があっさりと吹き飛ばされた。

 バーディーは既に春麗と自分のパワーの差を十分に思い知っていた。これ
で倒れれば解放されると薄れゆく意識の中奇妙な安心感を覚える。しかし、
バーディーが倒れることはなかった。なにか堅い物にぶつかる感触を感じる。
それは春麗を追い詰めたとバーディーが思い込んだビルの壁面だった。
 そのまま壁に身を預け、崩れ落ちそうになるバーディー。その目の前には
強靭かつ柔軟性に富んだ筋力を駆使し吹き飛んだバーディーに追いついた春
麗の姿が在る。バーディーはまだ解放されたわけではなかった。
「あらあら、私のパワーをたっぷりと教えこむにはちょうどいい場所ね」
 春麗は舌なめずりしてからそう宣言するとバーディーの顎をアッパーでか
ちあげた。崩れ落ちかけていたバーディーは再び春麗の拳により強引に立た
される。バーディーにとっての本当の地獄が幕を開けた瞬間だった。
 春麗は次々と容赦なくパンチの嵐をバーディーに叩きこむ。ストレート、
フック、アッパー、様々なパンチがあらゆる角度からバーディーの顔や身体
を穿っていく。吹き飛ばされれば運動エネルギーとして逃げていくはずの春
麗のパワーが余すところ無くバーディーの肉体を蹂躙する。
 春麗のフックやアッパーが叩きつけられればバーディーの口から白いかけ
らと血反吐が迸る。
 左右の春麗のボディフックがバーディーの脇腹を突き刺せば度々、肋骨が
嫌な音を立て或いは内蔵を叩き潰す。
 春麗のストレートがバーディーの頭部を捉えれば脳が激しく揺れる。そこ
へ壁面へと頭部がたたきつけられた衝撃が加わり、更に脳がシェイクされる。
 正面からの春麗のボディーアッパーやボディストレートがバーディーの腹
部を抉ると、ボクシンググローブがボーリング玉の様な硬さでバーディーの
内蔵がより強烈に押しつぶされる。
 バーディーの意識は消し飛びかけ、激痛により蘇るというサイクルを何度
も繰り返していた。しかも春麗の真正面からのパンチがバーディーに吸い込
まれる度、バーディーの身体が徐々に壁へと埋没していく。
「そろそろ限界かしらね、これじゃぁ、フックを打っても壁ごと殴ることに
なっちゃうし」

 バーディの身体が完全に壁面へとめり込んだ所で春麗は攻撃の手を一旦、
収める。磔となったバーディーの顔は元の倍以上に腫れ上がり鼻も潰れ、両
の瞼は目を完全に覆っていた。無論、バーディーの顔面の至る所を痣と流血
が広がっている。
 春麗の圧倒的なパンチを十二文以上に体験したバーディーは朦朧としたま
ま必死に己の負けを認める言葉を紡ぎ出そうとしていた。しかし腫れ上がっ
た頬と口元でまともにしゃべることが出来ない
「何よ?はっきりと喋ったらどう?」
 春麗はバーディーにそれが無理だとわかっていながらサディスティックな
笑みを口元に浮かべてから右の拳を振りかぶった。バーディーを吹き飛ばし
たコークスクリュー・ブローが再び唸りを上げる。
 春麗の全パワーが右の拳に集約されバーディーの顔面を真正面から捉える。
その一撃で遂にビルの壁は限界を迎えた。バーディーは粉砕された壁面の瓦
礫とともにビル内へと吹き飛ばされる。そこには綺麗にバーディーが磔にさ
れていた形で穴が穿たれていた。
「悪いことはいわないから シャドルーと縁を切りなさい!」
 穴の向こう側で埃まみれになり大の字となって倒れ、痙攣を繰り返すバー
ディーに春麗は宣言した。その声がバーディーの耳に届いていないと知りな
がらも。

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筋肉春麗の続編をまた読みたいです。
もし次回作を書くときは、対戦相手はどのようなキャラにするご予定ですか?

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